はじめよう、農業×エネルギー ソーラーシェアリング導入Q&A

 

はじめよう、農業×エネルギー

ソーラーシェアリング導入Q&A

ソーラーシェアリング、やってみたいけど…… 何から、どう手を付けたらいいか分からない。 農作業のこと、発電設備のこと、お金のこと、 疑問はどんどん湧いてきます。 でも、ご安心ください。 ソーラーシェアリング導入の疑問に答えます!


まずは導入の大まかな流れをつかもう!

ソーラーシェアリングを始める際には、どんな流れを追って進めていくべきか……まずは下の図をチェック。

一番上に横に並んでいる6つの項目(電力会社、経済産業省、太陽光発電設備は塩梅施工会社…)を確認。まずは、その中央にある「太陽光発電設備を設置する農家さん」が営農計画を立てることからはじまります。

その後、下の矢印に沿って進めていくことになりますが、重要なポイントには簡単な解説がつけてあるので、そちらも読みながら、大まかな流れを掴んでください。

 

<ポイント解説>

※番号は、上図の赤字番号に対応)

 

1:事前相談(農業委員会)

ソーラーシェアリングに関しては、各地の農業委員会が大きな権限をもっています。早めに相談して、地域特性にあった計画を進めていきましょう。

 

2:調査(太陽光発電設備販売施工会社)

太陽光発電の販売施工会社に現地調査を依頼。発電設備の仕様・概算見積りを出してもらいます。シェアリングに実績のある会社を選びましょう。

 

3:事前相談(金融機関)

資金を融資でまかなう場合、設備の概要が決まった段階で、金融機関に相談を。最近では、シェアリングに前向きなところも増えてきました。

 

4:設計・事業計画(太陽光発電設備販売施工会社)

融資の目処がたったら、販売施工会社に設備の設計を依頼。あわせて、FIT認定を受けるための事業計画策定をサポートしてもらいます。

 

5:接続契約締結(電力会社)

つくった電気を売るためには、電力会社と接続契約を結ばなければなりません。50kW以上の設備では、先行して接続検討を受けることも必要です。

 

6:FIT事業計画認定(経済産業省)

FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)認定により、20年間の電力買取が保証されます。認定を受けるには、事業計画の提出が必須です。

 

7:農地の一時転用(農業委員会)

ソーラーシェアリングを行うには、農地の一時転用許可を受けなければなりません。しっかりと営農を継続できる設備であるかが問われます。

 

8:融資(金融機関)

金融機関から、設備導入に必要な資金を調達。FITによって売電収益が予測できるので、無理のない返済計画を立てることが可能です。

 

9:設置工事・電気工事・竣工検査(太陽光発電設備販売施工会社)

いよいよソーラーシェアリング設備の設置工事が始まります。耕作を行っていない時期に合わせて、工期を設定しましょう。

 

10:電力系統連系工事(電力会社)

発電設備が完成したら、電力系統との接続(系統連系)が待っています。この工事が済めば、ついに売電がスタートします。


疑問が浮かんだら、こちらをチェック!

流れを掴んだら、早速浮かんだ疑問を解決しておきましょう。

ソーラーシェアリング推進連盟の代表理事を務め、今やソーラーシェアリングの第一人者でもある馬上丈司氏の監修の元、よくある質問と回答をまとめました。

まずは入門編として、以下の各記事をチェックしてみてください。



Q. 01 私にもソーラーシェアリングはできますか?

A.

ソーラーシェアリングは、農地に関わるいろいろな人が取り組むことのできる事業です。①「農家さん(地主)が自分の土地で耕作しながら発電事業も行う」というのが標準的なパターンですが、それだけではありません。②「地主、耕作者、発電事業者が、それぞれ別の人」という場合もあるし、③「農家さん(地主)が自分で耕作しているが、発電事業は別の人が行う」、④「地主は土地を貸しているだけで、耕作と発電事業は別の人が行う」、⑤「地主が発電事業を行うが、耕作は他の人が行う」ということもあります。

それぞれのパターンの特徴は……

①:手続きが比較的ラクで、金融機関からの融資も受けやすい。農業委員会の許可も得やすい。

②:大規模なソーラーシェアリングに多い。たくさんの人が関わるので地域活性化に結びつく。

③:発電事業をやりたい人と協力して、発電設備の地代を得ながら営農できる。

④:土地がなくてもソーラーシェアリングに本格参入できる。耕作者と発電事業者は法人である場合が多い。

⑤:農地の有効活用をしたいと考える地主さんに最適。農地を守りながら収益アップを実現できる。


Q. 02 ソーラーシェアリングで作れる作物は? 収穫量は落ちない?

A.

太陽光パネルの下でも、適切な遮光率であれば、ほとんどの農作物が問題なく育ちます。これは、植物の葉が光合成に活かせる光の強度には上限(光飽和点)があり、それ以上の強い光はもともと必要とされていないため。既に日本には1000ヶ所以上のソーラーシェアリング導入事例があり、実際に育てられた作物の品種は多岐にわたっています。  作物の生育には、遮光率以外にも日長・気温・地温・土壌・肥料・降雨量など様々な要素が関係するため簡単に比較することはできませんが、ソーラーシェアリングの産みの親である長島彬さんが推奨する遮光率「35%以内」でパネルを設置していれば、生育不良になる心配はまずありません。また、里芋などソーラーシェアリングによって収穫量がアップしたと報告されている作物もあります。

 


Q. 03 農業振興地域、第一種農地でも太陽光発電ができるの?

※写真はイメージです。

A.

通常の太陽光発電所の設置では許可されませんが、ソーラーシェアリングなら農業振興地域でも可能です。

これはソーラーシェアリングが単なる発電事業ではなく、農家経営の改善や農業地域の活性化に役立つものと期待されているためです。これまでは農業以外に活用することが原則不許可とされていた土地=甲種農地・第1種農地などでも幅広く取り組むことができます。2013年に、農林水産省がソーラーシェアリングに関する指針を出したことで、広く認められるようになりました。

ただし、ソーラーシェアリングの設置には太陽光パネルの支柱の基礎部分について農地の一時転用許可を得る必要があります。一時転用許可の期間は3年間で、ソーラーシェアリングを続けていくためには、3年ごとに再許可を受けなければなりません。

一時転用許可を得るためには、いくつかの条件がありますが、主なものは以下の通りです。なお、この一時転用を行っても土地全体の地目は農地のままですから、土地の固定資産税が上がるといった税制上不利になることはありません。

 

ソーラーシェアリングに必要な農地一時転用の主な許可条件

①簡易な構造で容易に撤去できる支柱であること。

②下部の農地における営農の適切な継続が確実であること。

③支柱の高さ・間隔等からみて農作業に必要な機械等を効率的に利用できる空間が確保されていること。

④下部の農地における単収(面積あたりの収穫量)が、同年の地域の平均的な単収と比較して2割以上減少しないこと。

⑤下部の農地において生産された農作物の品質に著しい劣化を生じさせないこと。


※そのほかの記事は、[Q&A一覧]のリンクからご確認ください。


監修 馬上丈司
illustration: Tomoyuki Okamoto text: Kiminori Hiromachi

(「アースジャーナルvo.5」より転載 ※一部再編集)