基礎講座:そもそもソーラーシェアリングってなに?

ソーラーシェアリングは、別名「営農型太陽光発電」とも称される。耕作地の上に太陽光パネルを設置して、1つの土地で農業と発電事業を同時に行おうという仕組みだ。

当講座では、そんなソーラーシェアリングの基礎知識を「仕組み」「作物」「意義」「売電の仕組み」「農水省の制度」という5つの項目で噛み砕いて解説する。(全2回)

 

[基礎講座]

ソーラーシェアリングって そもそも何なの?

農作物をつくりながら、電気までつくってしまう──それが、これからの農業スタイル「ソーラーシェアリング」だ。太陽の恵みを余すところなく活かし切る、環境調和型システム。そこには、様々な日本の課題を解決する、大いなる可能性が満ちている。

[仕組み]

農地の上に太陽光パネル それが新しい農村の風景になる

農家の経営安定と自然エネルギーの普及を両立させる一石二鳥のシステムとして、いま多方面から期待を集めているソーラーシェアリング。 少し前までは、農地法の運用が厳しく、農地を農業以外に使うことは原則としてできなかった。

しかし2013年、農林水産省が一定の条件のもと、これを認める方針を打ち出したことで、着実に広まってきた。一般の認知度はまだまだ低いが、既に実証段階を終え、いまや日本全国1000ヶ所以上で導入されているのだ。

 

[作物]

作物に過剰な光は必要なし パネルの下でもよく育つ

気になるのは、太陽光パネルの下で、農作物がちゃんと育つのかということだろう。しかし、心配はご無用。ソーラーシェアリングでは、一定の間隔を開けて太陽光パネルが設置されるので、生育に必要な光は十分に降り注ぐ。どの程度の間隔で太陽光パネルを設置し、どの程度の遮光率を確保すれば良いのかも実証されている。

そもそも植物は、種類ごとに必要とする光の量に上限があり、強すぎる光は成育の役には立っていない。普通に栽培されている大半の野菜は、ソーラーシェアリングによって悪影響を受けることはない。むしろ遮光することで、成育状況が良くなるものも少なくないのだ。

 

[意義]

日本農業の課題とエネルギー問題を一挙解決

長らく日本の農業は、儲からない職業とされ、後継者不足に悩まされてきた。耕作放棄地は増え続け、農村地域の活性化はままならない。一方で、地球温暖化が進み、自然エネルギーの普及加速化は世界的な要請だ。特に日本にとっては、エネルギー自給率を上げるためにも、自然エネルギーへの転換は不可欠だろう。

ソーラーシェアリングには、問題解決への大きな可能性が秘められている。農家は、農地を守りながら、発電事業で安定した収入を得ることができる。農村は、環境を犠牲にすることなく、活力ある地域を蘇らせることができる。そして日本は、自然エネルギー導入拡大への新たな道筋を描くことができるのだ。

 

[売電の仕組み]

だから安心、だから確実! 国が電気の買い取りを20年間約束

ソーラーシェアリングの大きな魅力は、つくった電気を売ることで、安定した売電収益が得られるところにある。しかも、決まった単価で20年間、変わらずに買い取ってもらえるのだ。

これを支えているのが、国が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」、いわゆるFIT制度だ。実際に電気を買い取るのは電力会社(一般送配電事業者)だが、その価格は年度ごとに国が定め、電力会社には20年間、同じ単価(FIT買取価格)で買い取ることが義務付けられている。だから、先々まで収入の目処がたち、農業にも安心して取り組めるというわけだ。

太陽光パネルを設置しても農作物の収量が落ちることはまずないので、農業収入はほぼ変わらない。売電収入とのダブルインカムで、収入総額の大幅アップが期待できる。

もちろん発電設備の導入に費用はかかるが、現状では8年〜10年程度で元が取れるケースが多いようだ。FIT価格は年々下がっているが、太陽光発電設備も値下がりが続いているので、初期費用も安く済むようになってきている。ソーラーシェアリングは、いわば国によって利益が出ることを約束された事業なのだ。

 

[農水省の制度]

第1種農地でも、できる! 農水省が認めた新しい農地活用法

ソーラーシェアリングは、営農を前提とした太陽光発電システム。だから、農業に支障が出ないよう、その導入には一定の条件が付けられている。その条件が初めて明確に示されたのが、2013年3月31日付に発せられた農林水産省の通達「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」だ。これはソーラーシェアリングの導入条件を示したものであると同時に、この条件さえ満たせばソーラーシェアリングを行っても良いと農水省が正式に認めたものとして評価される。

具体的には、まず太陽光パネルを支える支柱(架台)の高さ・間隔について、トラクターなどの農業機械を効率的に利用できる空間の確保が求められる。そして重要なのが、ソーラーシェアリングを行うためには、その支柱の基礎部分について農地の「一時転用」をしなければならないということだ。

一時転用許可期間は3年(※)で、問題がなければ3年ごとに再許可される。一時転用許可にあたっては、パネル下部の農地における収穫量が、その地域の平均と比較して2割以上減少しないことなどが審査される。

※編注:2017年9月時点。現在は制度改正により、一定の条件を満たす場合は10年に延長されている。

営農型太陽光発電の促進策」/農水省

 

基礎講座:ソーラーシェアリングって そもそも何なの?(1)

基礎講座:ソーラーシェアリングって そもそも何なの?(2)

 

illustration : Chisato Hroi

(「アースジャーナルvo.5」より転載 ※一部再編集)