基礎講座:ソーラーシェアリングって そもそも何なの?(2)

農作物をつくりながら、電気までつくってしまう──それが、これからの農業スタイル「ソーラーシェアリング」だ。太陽の恵みを余すところなく活かし切る、環境調和型システム。そこには、様々な日本の課題を解決する、大いなる可能性が満ちている。

[売電の仕組み]だから安心、だから確実! 国が電気の買い取りを20年間約束

ソーラーシェアリングの大きな魅力は、つくった電気を売ることで、安定した売電収益が得られるところにある。しかも、決まった単価で20年間、変わらずに買い取ってもらえるのだ。  これを支えているのが、国が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」、いわゆるFIT制度だ。実際に電気を買い取るのは電力会社(一般送配電事業者)だが、その価格は年度ごとに国が定め、電力会社には20年間、同じ単価(FIT買取価格)で買い取ることが義務付けられている。だから、先々まで収入の目処がたち、農業にも安心して取り組めるというわけだ。  前ページで触れた通り、太陽光パネルを設置しても農作物の収量が落ちることはまずないので、農業収入はほぼ変わらない。売電収入とのダブルインカムで、収入総額の大幅アップが期待できる。  もちろん発電設備の導入に費用はかかるが、現状では8年〜10年程度で元が取れるケースが多いようだ。FIT価格は年々下がっているが、太陽光発電設備も値下がりが続いているので、初期費用も安く済むようになってきている。ソーラーシェアリングは、いわば国によって利益が出ることを約束された事業なのだ。

[農水省の制度]第1種農地でも、できる! 農水省が認めた新しい農地活用法

ソーラーシェアリングは、営農を前提とした太陽光発電システム。だから、農業に支障が出ないよう、その導入には一定の条件が付けられている。その条件が初めて明確に示されたのが、2013年3月31日付に発せられた農林水産省の通達「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」だ。これはソーラーシェアリングの導入条件を示したものであると同時に、この条件さえ満たせばソーラーシェアリングを行っても良いと農水省が正式に認めたものとして評価される。  具体的には、まず太陽光パネルを支える支柱(架台)の高さ・間隔について、トラクターなどの農業機械を効率的に利用できる空間の確保が求められる。そして重要なのが、ソーラーシェアリングを行うためには、その支柱の基礎部分について農地の「一時転用」をしなければならないということだ。  一時転用許可期間は3年で、問題がなければ3年ごとに再許可される。一時転用許可にあたっては、パネル下部の農地における収穫量が、その地域の平均と比較して2割以上減少しないことなどが審査される。

 

 

1200㎡の農地があれば、約50kWのソーラーシェアリングを導入できる。ここで期待できる年間発電量は平均約80000kWh。2017年度のFIT買取価格は、1kWhあたり21円(10kW以上2000kW未満の太陽光発電設備の場合)。従って、年間約170万円の売電収益を見込むことができる。ソーラーシェアリングの導入費用に1400万円かかるとして、およそ9年間の売電収益で、初期投資額を回収できる。FIT買取期間である20年間の売電収益の合計は、約3400万円となる。農業収益にプラスして、農家の経営安定に貢献することは間違いない。

 

日本のソーラーシェアリング 2016年度には1000件を突破!

2013年の農林水産省による通達を受けて、ソーラーシェアリングの導入は着実に進んでいる。2016年度には総計1054件と、ついに1000件を突破した。北は北海道から、南は沖縄まで、ほとんどの都道府県に広がりをみせている。(※最新の情報は、こちらを参照ください)

 

[コラム]

自然を壊さず自然と生きる

ソーラーシェアリングは、1人の男の情熱から生まれた。彼の名は長島彬。農業機械メーカーで長年研究開発に携わり、およそ400件もの特許を取ってきた人物だ。定年後に入った慶應大学で、初めて「光飽和点」のことを知った。一定の強さを超えた光は植物の光合成には貢献しないという原理だ。そして、すぐに思った、「太陽の光を植物の光合成と太陽光発電とで分け合う(シェア)ことができるのではないか」と。  2004年に特許を出願し、無償で誰でもこの技術が使えるよう2005年に公開した。2010年には、千葉県市原市にソーラーシェアリングのための土地と家を購入し、本格的な実証研究を開始した。2013年、農林水産省がソーラーシェアリングを認める方針を打ち出した背景には、長島さんの取り組みが大きな意味を持っていたのだ。  今日では、全国1000ヶ所以上にまで普及したソーラーシェアリング。長島さんは、この現状に対し、「ソーラーシェアリングが広まっていくのは良いが、なかには不適切な設備もある。あくまでも営農を重視し、自然災害に強いものでなければならない」と釘をさす。それゆえ、適切な設備としては、「細身の太陽光パネル(35cm程度)、遮光率は35%以内、強風時にはパネルを容易に水平にできる構造」であることを推奨する。  さらに、「ソーラーシェアリングは農業だけのものではない」のだとも。屋上庭園や駐車場、水産業などにも応用できるという。いまや、その意義は海外でも認められ、熱帯地方の飢餓と貧困をなくす技術としても注目を集めている。自然を壊さず、自然と共生する太陽光発電……ソーラーシェアリングには無限の可能性が秘められているようだ。

ソーラーシェアリングを推進する会 会長 CHO技術研究所代表

長島 彬さん

 

illustration : Chisato Hroi

(「アースジャーナルvo.5」より転載 ※一部再編集)

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