【開催レポート】長島彬さん講演会/ソーラーシェアリングの現状を鋭く分析、問題提起も

お知らせしていた通り、さる2月25日(月)に当サイトの主催によるソーラーシェアリング発案者・長島彬さんの講演会が、都内のインキュベーション施設「渋谷100BANCH」にて開催された。

この「渋谷100BANCH」は、パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーの3社によって作られた、未来を担う若者たちが様々な実験的プロジェクトを実践する場所。今回会場となったのは、その3Fにある LOFTで、「次の100年」を創り出すための拠点として、ワークショップほか発表会など、様々な用途に使えるスペースとなっている。いわゆる「講演会」然とした雰囲気とは異なる、よりオープンで双方向なコミュニケーションの可能性を感じさせるそんな環境の中で、催しはスタートした。

 

 

東さんのオープニングトークで、ソーラーシェアリングの現状を俯瞰

 

まずオープニングトークとして、市民エネルギーちばの東光弘さんが登壇。東さんは、ソーラーシェアリングの黎明期から長島さんに学んだソーラーシェアリングを活かしながら、環境型の地域づくりとして活動を続けてきた。

「長島さんが発案したソーラーシェアリングの根本には、『分かち合い』の精神がある。私たち(市民エネルギーちば)も、千葉県匝瑳市でその精神に沿って活動を続け、地域の協力やたくさんの仲間たちに支えられ、設立から5年で2つの新たな農業法人設立、10人ほどの新しい雇用を生み出している」

「耕作放棄地の再生はもちろんだが、地元にお金が流れる仕組みを作り、さらには古民家再生によって農村移住や地域おこしのインキュベーション拠点も作るなど、農村と都市がつながるきっかけづくりにもソーラーシェアリングを活用している」

「規模は小さいが、持続可能な循環モデルを構築することで、将来的にはソーラーシェアリングが農業資材、あるいは地域を復活させるひとつのツール・強力なエンジンとなって、さらに広がっていくことを願っている」(東さん)。

短い時間ではあったが、長島さん直伝によるソーラーシェアリングの実践者の一人として、活動の成果が網羅されたプレゼンテーションは、そのままソーラーシェアリングの現状を表しているとも言え、来場者にとっては、本編に備える“おさらいの時間”として、とても有意義だったに違いない。

 

オープングトークで、千葉県匝瑳市におけるソーラーシェアリングの歩みと現状について俯瞰する東さん。

 

本題は「とんでもない新事実」…

 

いよいよ長島さんの講演へ。

「今回は『ソーラーシェアリングの未来へ』というテーマでお話しするが、準備を始めたらとんでもない事実が芋づる式にわかってきて、ここ1週間は寝る間も惜しんで準備をしました…」

と、話し始めたその内容は、まず化石燃料の時代の終焉、原子力発電の矛盾、さらには、独自に“偽りの廉価”と名付けたという、現状の太陽光発電の問題点など。そして、そうした問題をクリアするために、ソーラーシェアリングがいかに有効かが語られていく。

続いて「ソーラーシェアリングのポイントは、風対策」とし、風力係数を実測して強度問題を正しく解決するべきだと主張。また、自身で発案・特許を取得した「スマートターン(ソーラーパネルの角度を、自在に変えられる仕組み)」や、その改良点についても言及されていった。

 

長島さんの、時には柔らかく、時には鋭く問いかけるような独特の語り口に引き込まれ、2時間近い講演時間は、あっという間にすぎていった…。

 

公開された情報から、新事実や矛盾点を鋭く指摘

 

そして、いよいよ本題。「衣の下の鎧」という諺になぞらえながら、苦労して調べた末にたどり着いたという新事実……再エネ賦課金の疑問点や再エネ普及の足かせとなり得る送配電設備に関する託送料金について、あるいは、買い取り価格の下落に関する矛盾などを鋭く指摘、講演はどんどん熱を帯びていった。

来場者は、ソーラーシェアリングの実践者や導入検討者、設備関連メーカーや施工会社、さらには純粋に興味を抱く農家の方など、様々なカテゴリーに属する人々だったが、誰でも“その気になりさえすれば”インターネットを通じて取得できるデータ(情報)をベースに、発案者として関わってきた事案や研究内容なども交えながら語られる噛み砕いた説明は、所々に散りばめられたユーモアも相まって、わかりやすく、また非常に示唆に富んだものだった。

 

インターネットに広く公開されている情報からソーラーシェアリングの未来へつなぐ情報をいかに導き出すか……それは、ソーラーシェアリングを未来へつなぐために、後進の我々への貴重で具体的なアドバイスだったと言っていいだろう。

 

講演に込められた長島さんの想い

 

講演を聴き終えてわかったのは、ソーラーシェアリングを「未来へ」つなぐためにクリアすべき課題が、長島さんから我々に宿題として投げかけられたのだ、ということ。実際、講演の中で長島さんが

「私はこう思いますが、正しいかどうか…その答えは、皆さんが出してみてください」

と、ダイレクトに語りかける部分もあった。

ソーラーシェアリングの発案者にして、長年その真価を広めるべく最前線で自ら実証実験と拡散に務めてきた長島さんも、すでに高齢を迎えている。多くのフォロワーが日本全国で日々活動しているのはもちろん事実だが、まだまだその広がりは十分とは言えない現状もある。

今回長島さんから提示された課題や問題点を、今後は誰が、どのように見つけ、そして解決していくか? それはもちろん後進の我々が切り開いていくべき道だと言えよう。

 

講演終了後には、質疑応答、意見発表の時間も。会場のオープンな雰囲気もあって、次々に発言者がマイクを手にする。

 

最後には、懇親会として意見や情報の交換など、参加者交流の時間が設けられた。長島さんと直接話ができる貴重な機会とあって、時間が足りないくらいだった。

 

ソーラーシェアリングのさらなる拡散に向けて、我々がやらなければならないこと

前述の通り、長島さんの講演の内容を振り返ると、これからソーラーシェアリングのさらなる拡散に向けて、参加者だけでなく、全国の実践者や関連メディアも含めた、関係者のさらなる努力は不可欠であることを実感する。

先の推進連盟のオープンMTG取材でも感じたことだが、全国の成功事例の事業スキームやその課題、営農成果に到るまで、情報の吟味と共有をもっと進めていかなければならないのは間違いないだろう。

読者の皆さんにも、是非とも協力をお願いするとともに、またこのようなイベントについても積極的に展開していければと思う次第だ。

なお、最後となってしまいましたが、今回初の主催イベントとして、長島彬さんの講演会を開催できたことについて、共催はもとより、後援、協賛いただいた各社の皆さまに対して、この場を借りて心より御礼を申し上げます。


「DIVEST SHIBUYA!」について

http://100banch.com/projects/11846/DIVESTSHIBUYA%EF%BC%81

今回の講演会は、共催者であり、会場である渋谷100BANCHで活動するプロジェクト「DIVEST SHIBUYA!」の協力によって実現した。「ダイベストメントとは、投融資の撤退のこと。私たちは活動の中で気候変動に取り組んでおり、地球に優しい銀行一覧などを作成している国際環境NGOの『350.org Japan』と連携しています。人権侵害や環境破壊に関連する企業やプロジェクトにお金を流すのではなく、もっとサステナブルなお金の流れになるよう、金融機関に情報開示を求めたり、市民の皆さんに地球に優しい銀行を使っていただくよう活動しています。今、パリやロンドン、ニューヨークのような国際都市は、自治体として石油事業に投融資している銀行と取引しないという「ダイベストメント宣言」をしています。私たちは、ここ東京の渋谷区でそれを実現するべく、長谷部区長とプロジェクトをご一緒しています。匝瑳市のプロジェクトに融資された城南信用金庫さんのように、ソーラーシェアリングという地球に優しい事業への融資を進める金融機関がもっと増えていくことを願っています」(DIVEST SHIBUYA! 松尾さん)

 


活発な意見交換でさらなる結束 第2回推進連盟オープンミーティングレポート

 

 

 

 

 

 

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