希少価値の高い国産キクラゲ栽培にチャレンジ/宮城県登米市

これまでにも紹介してきた通り、そもそもソーラーシェアリングとは営農のための太陽の光を、発電(事業)とシェアする仕組み。しかし、逆に太陽光発電設備によってできる影を活用して、日射がほぼ必要のない作物を栽培する、というアプローチも全国で見られるようだ。

今回はそんな発想で、キクラゲの栽培に取り組んでいる宮城県登米市にある「登米善王寺太陽光発電所」を取材した。

再生可能エネルギー事業を専門に取り扱うサステナジーが、日立キャピタル(プロジェクトファイナンス型リース提供)、大和ハウス(EPC)とともに建設したこの発電所は、発電容量2MWと、大規模なもの。

栽培作物にキクラゲを選択したのは、日射を必要としないという理由のほかに、国内で流通する商品の9割以上が中国産に依存しているため、希少価値の高い国産品はニーズが高く、販路拡大が見込めると踏んだため。栽培は、スワンドリームが地元の方を新たに雇用し進めている。

 

現在栽培しているのは、菌床にして約5,000個。収量は多い時で1日約80kg、月約300kgほどだという。収穫の他、湿度調整のために菌床を覆うビニール製カーテンをこまめに上げ下げして調整するなどの作業を、概ね社員1名+パート4名で行なっている。

 

約1年が経過して見えてきた販路拡大の壁

しかし、2017年6月の稼働から一年あまりが経過して(2018年7月時点)、現在メインであるキクラゲ栽培については、課題も出てきているという。

収穫したキクラゲの品質は、輸入品に比べて肉厚で当初は評価も上々だったが、いざ販売すると、消費者が既存の輸入品に慣れているため、なかなか需要が伸びないという状況に突き当たってしまったのだ。

現在は販路拡大と栽培の拡大を目指し、打開策を模索中とのことだった。

地域の未利用農地問題の解決に向けてスタートしたプロジェクトゆえに、なんとか活路が開けることを願うばかりだ。

 

栽培作物の選択について

ソーラーシェアリングで栽培する作物の選定については、様々なアプローチが存在し、収穫した作物の販売についても、多くの課題が存在する。

具体的な指摘は避けるが、有名無実の営農計画を持ってソーラーシェアリングと称する事例も多く存在するという。

ソーラーシェアリングの導入が始まって5年あまり、まだまだ拡散が始まったばかりの黎明期であるがゆえに、様々なバリエーションは存在してしかるべき。しかも農業は、そもそもその土地土地の風土にあった形で行われるものであり、ソーラーシェアリングもその一環ということを考えればなおさらだろう。

あくまで発電事業ベースで本来の営農を軽視したまま推進するケースは支持できないが、地域の未利用農地や後継者問題、環境問題などに取り組む際のツールとして活用していく限りにおいては、様々なモデルが今後も生まれていくだろう。

そうしたプロジェクトの背景も踏まえた上で、当サイトでは様々な事例を、課題も含めてご紹介していければと思う。

 

 

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