ソーラーシェアリングの盛り上がりを実感! 連盟シンポジウムレポート (1)
5月31日、ソーラーシェアリング推進連盟による設立記念シンポジウムが開催された。直近に農水省による規制緩和の発表もあったせいか、開催告知直後から大きな反響を呼び、定員170名がほぼ1週間で満席に。当日の盛り上がりをレポートする。
錚々たる顔ぶれが語るソーラーシェアリングの可能性
ソーラーシェアリングが農水省によって正式に認可されてから今年で丸5年を迎え、導入事例も日本全国で1200箇所あまり。そんな中、今後ソーラーシェアリングのさらなる広がりを目指すために今年4月に発足したのが、今回のシンポジウムを主催するソーラーシェアリング連盟だ。 冒頭挨拶で同連盟の代表理事である馬上氏(千葉エコ・エネルギー)が訴えた、その目指すところとは「幅広く色々な立場の方々が参加できるネットワーク作り」──まさにそんな活動の手始めとも言える今回のシンポジウムは、全国から予想を超える多くの来場者を迎えての開催となった。
まず、城南信用金庫(※当日の会場を提供提供、同社顧問の吉原毅氏は連盟の顧問でもある)の渡辺泰志氏、そして前述の馬上氏の挨拶に続いて、連盟最高顧問でありソーラーシェアリング発案者でもある長島彬氏が講演、過去25年の関連事項を振り返りつつ、この先2年の展望を披露する。続いて、来賓の鎌田智也氏(農林水産省)が登壇し、「営農型太陽光発電の促進策」について解説。先ごろ発表され話題となった「農地の一時転用期間の延長(従来の3年から10年に)」のほか、「優良事例の紹介」や取り組む際の「注意点をまとめたチェックリスト」、各地方農政局に設置される「相談窓口」などについて触れながら、農水省が再エネで地域活性化を目指す中でも、ソーラーシェアリングが全国の耕作放棄地問題や農家の収益向上などの問題解決に非常に有効とする考えを語った。また、先ごろ話題となった千葉県匝瑳市のメガソーラーシェアリングにもパネルを提供した大手太陽光発電メーカーWWBの龍潤生社長も特別ゲストとして登壇。同社のソーラーシェアリング事業に対する実績や今後の取り組みに対する意気込みについて紹介した。
その後は、テーマセッションとして、飯田哲也氏(全国ご当地エネルギー協会、ISEP)、近藤恵氏(飯館電力)、井上保子氏(宝塚すみれ発電)と、ソーラーシェアリングのまさに“草分け”的な面々が登壇し、講演や事例報告がなされていく。これだけでも、ソーラーシェアリングに興味を抱く人にとっては、かなりの充実ぶりなのだが、さらには、馬上氏と、辻井隆行氏(パタゴニア日本支社)、池田真樹氏(横浜環境デザイン)という異色の取り合わせによる「ソーラーシェアリングが拓く新しい地域エネルギーと農業」と題したパネルディスカッションまであり、実に密度の濃い内容だった。 シンポジウムの後に設けられた自由参加の懇親会も大いに賑わい、来場者同士、あるいは登壇者との情報交換やネットワーキングが盛んに行われる様子に、今後のソーラーシェアリング界の盛り上がりを予感せずにはいられなかった。
なお、連盟では、7月にも「全国ソーラーシェアリングサミット2018 in あしがら小田原大会」と題し、ソーラーシェアリングをイチから学べるイベントも開催予定とのこと。興味ある方は是非参加して見ていただきたい。
「ソーラーシェアリングは、農家の後継者問題・耕作放棄地問題だけでなく、エネルギー問題をも解決できる夢の技術。その普及による地域経済の活性化に向けて鋭意取り組んでいく」(城南信用金庫理事長 渡辺泰志氏)
「今年は環境省が発表した第五次環境基本計画にも、“営農型太陽光発電の推進”という文言が盛り込まれた。政策においても再エネを別の角度から考える機運が高まっているということ」(連盟代表理事/千葉エコ・エネルギー 馬上丈司氏)
「“渇しても盗泉の水を飲まず(苦しい状況でも悪事には手を出さない)”。“天知る地知る(悪事はいつか露呈する)”──連盟発足にあたり、コンプライアンスについても再確認するべき。」(連盟最高顧問/CHO技術研究所 長島彬氏)
「農水省としても、草の根的なソーラーシェアリング促進の活動も行って行きたい。地域で研修会などあれば、ぜひお声がけいただきたい」(農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室長 鎌田智也氏)
「昨年の3ヶ月で50箇所という実績を踏まえ、2018年には、北海道、津軽、群馬、埼玉、長野、徳島、九州全域で、取り組み目標を500箇所に設定している。また、SDGsのうち6項目に対するソリューションとして、ソーラーシェアリングを発展途上国で展開する計画も進行中です」(連盟理事/ISEP所長 飯田哲也氏) ※注:登壇を予定していた連盟理事の全国ご当地エネルギー協会 佐藤彌右衛門氏が欠席のため、同協会理事も務める飯田氏が急遽駆けつけ登壇した。
「ソーラーシェアリングには、資金調達、合意形成、部材調達という3つの壁が存在すると言われているが、さらに若手農家の育成というもう一つの壁も存在する。福島(被災地)では、30年早く過疎化が進むとも言われる。だからこそ、ソーラーシェアリングを30年早く進めなければならないと考えている」(連盟幹事/飯館電力 近藤恵氏)
「食とエネルギーを結びつけていくためには、一人で頑張るのではなく、いろんな団体が寄り集まってみんなの力で作っていくことが大事。地域に産業がないならば作って行けばいい。ソーラーシェアリングは立派な産業」(連盟幹事/宝塚すみれ発電 井上保子氏)
「社名のWWBとはWin Win Businesを意味する。社内で、お客様と、そして社会ともWin Win関係を目指している。ソーラーシェアリングに関しては、匝瑳のメガソーラーシェアリングにご縁があってパネルを提供させてもらったが、今後の事業の大きな柱と捉えている。海外においても、中国、スリランカにおける淡水魚養殖と太陽光発電のカップリングや、モンゴルにおけるソーラーファーム発電所の計画も進行中。ハウスなどで活用可能な軽くて自在に曲がるパネル開発にも成功している」(WWB龍潤生社長)
ソーラー業界、アパレル業界と一見異なる業種のお二人と連盟代表理事馬上氏によるパネルディスカッションでは、「ソーラーシェアリングにおける農業は、どんな関係性で進化していくべきか」「ソーラーシェアリングで作られたエネルギーは、将来的に価値あるエネルギーとして認知されていくのか」と言った興味深いテーマについて、意見が交わされた。最後には来場者も参加したワークショップ形式の“問いかけ”も…。 ※詳しい内容については、別記事にて紹介予定。
推進連盟幹部メンバー、登壇者のみなさん。まさにこれからのソーラーシェアリング界を引っ張っていく顔ぶれといっても過言ではないだろう。
photo Satoshi Kaneko