【取材レポート】持続可能な農村を目指しアフリカ研修生を受け入れ/ソーラーシェアリング上総鶴舞(千葉県市原市)

千葉県市原市にある「ソーラーシェアリング上総鶴舞」代表の高澤真さんは、リニューアブルエナジーを活用した持続可能な農村スタイルの確立を目指して日々活動する中で、国や県の様々な取り組みとも連携、海外からの研修生の受け入れも数多く行なっている。

今回は、そんな取り組みの一つ、政府のアフリカ支援事業である「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアチブ」の研修生視察の様子を取材させていただいた。

当日現地を訪れた研修生たちと。左からセンガン・センさん(セネガル/宮城大学)、高澤さん、スタンリー・ヌング・チャパサさん(マラウイ/新潟大学)、アマディ・スィセさん(セネガル/琉球大学)。研修生たちはみな国費で日本の大学に留学、食産業や電気電子工学、灌漑・水性力学などを学びつつ、休日を利用してこうした視察にも参加しているのだという。

 

ソーラーシェアリングからはじまる持続可能な農村

 

高澤さんがソーラーシェアリングを導入してからもう丸5年以上、つまりこの「ソーラーシェアリング上総鶴舞」は、まさに日本のソーラーシェアリングの「草分け」的存在でもある。これまで国内外から多くの視察を受け入れてきたが、アフリカからの研修生を迎えrのは、今回で4回目とのこと。

「留学生たちは、日本の農業機械をアフリカに持って帰りたいという強い気持ちを持っていますね。ただ、リニューアブルエナジーを使って持続可能(サステナブル)な社会の構築を目指すのは、アフリカも日本も全く同じだな、というのが実感です」(高澤さん)

高澤さんは、こうした海外研修生受け入れのほか、千葉県のボランティア参加促進事業の業務委託も請け負っており、竹林整備なども手がけている。

「竹林の活用法としては、たけのこ、国産メンマ、竹炭などがあります。そうした活用を進めて行くためにも、多くのボランティアが必要ですし、ひいては“農福連携”という社会的な使命もあると思っています。日本の社会は、ますますこういった活動の場所を必要としているし、また、そういう場所を必要としている人たちも増えていると感じます。ソーラーシェアリングから始まり、持続可能な農村スタイルを確立することが、私の最終目的なんです」(高澤さん)

ソーラーシェアリング上総鶴舞を紹介するイラスト(高澤さん提供)。まさに高澤さんがイメージする持続可能な農村の姿そのものだ。

 

ソーラーシェアリング上総鶴舞は、1号機から3号機まであり、容量は全部で34.8kWの容量(パワコンが10kW×3台なので、経産省への申請は30kW)。一般家庭の使用量に換算すると、約10軒分に相当する。年間の発電量は約40,000kWとのこと。

 

パネル下では、サトイモやナス、トマトほか、季節ごとに多種多様な野菜を栽培。訪れた研修生たちも、その豊かな実りに終始興味津々だった。

 

千葉県の特産品として有名な落花生ももちろん栽培。アフリカでも栽培しているというが、収穫後生で食べるのだそう。日本のものに比べると、もっと小粒なのだとか。

 

高澤さんは、自宅近くに竹林も所有する。千葉県のボランティア参加促進事業である「千葉の里山でおもてなし 持続可能社会に向けたボランティアの取り組み」の業務委託も請け負っており、収穫したタケノコを使った国産のメンマ作りにも取り組んでいる。昨年6月には、福岡県糸島市から講師を招いて、このメンマ作りをモチーフに、地域資源活用のシンポジウムも千葉県市原市内で開催したそう。

 

高澤さん宅(ソーラーシェアリング上総鶴舞)近隣は、その昔農業用の水の確保に大変苦労した歴史があるそう。先人たちが作った灌漑用水の設備跡が、竹林のすぐ下に残っている。水の確保については、研修生たちも共感するところが多いようで、説明に熱心になずいていた。

 

母国のために

現地視察のあとは、市内の施設に移動して、座学も実施された。研修生たちは、当然ながらいずれも国を代表してきているという意識が高く、今回の視察をどうやって活かしていくか、想いは膨らんだ様子だった。

「本当は昨年来る予定でしたが、叶わなかったので、今回実現して感謝しています。国では魚の養殖を手がけているのですが、養殖をしながら野菜を育てるアクアポニクスに興味を持っています。先ほどこの地域でも灌漑で苦労したという話がありましたが、セネガルでも長い乾季があり水には苦労します。そういう意味でも、水の確保や循環は重要なテーマだと思っています」(センガンさん)。

「セネガルでも農業は盛んですが、雨季に頼っているため、年に3ヶ月ほどしかできません。ソーラーパワーを活用すれば自動灌漑設備も可能だと思い、今回の視察に申し込みました。乾季には晴れの日が続くので、ポテンシャルは大きいと思います」(アマディさん)。

「アフリカでは電力不足が問題になっています。母国マラウイには非電化地域もたくさんあります。電力については、水力発電に頼っているのが現状で、水資源の低下に影響を受けてしまうので、太陽光発電には期待も寄せられていますし、政府も力を入れています」(スタンリーさん)。

 

世界へ広がるソーラーシェアリングの可能性

ソーラーシェアリングは、そもそもが農業であるがゆえに地域との強い結びつきがあり、20年以上にわたって継続して行くためにも、高澤さんのように、個人としてはもちろん地域として目指すべきビジョンが必要だ。そこには、エネルギー問題だけでなく、今回見たような竹林の問題であったり、他の地域との関係性など、様々な課題をトータルで考える必要があるだろう。

高澤さん自身、ソーラーシェアリングを手がけたことで、急速にネットワークが拡大して、人脈も増え、多くの知見を得ることができたと語ってくれたが、今回のような海外の研修生受け入れも、そうしたネットワークの重要な部分を占めているのは間違いない。

日本発の技術であるソーラーシェアリングが、国内のみならず海外でも注目を集め始めている今、こうした取り組みの意味はとても大きい。

そして、明確なビジョンのもとに取り組みを続ける高澤さんの想いは、今回訪れた研修生たちへの噛み砕いた説明の端々に滲んでいたし、参加した彼らにもしっかり届いたに違いない。

ソーラーシェアリング上総鶴舞1号機にて。「ソーラーシェアリング」をきっかけに、日本の、そして世界の未来に向かって、着実な一歩は踏み出されている。

 


(2018年8月取材)

 

 

 

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