【取材レポート】PV EXPO(国際太陽電池展)/ソーラーシェアリングの注目度とは?
さる2月27日〜3月1日に東京ビッグサイトで、ビジネスパーソン向けの商談・展示会「スマートエネルギーウィーク内/PV EXPO(国際太陽電池展)」が開催された。
昨年から今年にかけて、制度改正などの追い風もあり、注目度は大いに上がっていると感じられるソーラーシェアリングだが、太陽光発電業界においては、果たしてどのくらいの盛り上がりを見せているのか……業界をリードするメーカー各社のブースとともに、来場者の雰囲気を感じるべく取材した。
“デフォルト化”した?ソーラーシェアリング
まず会場の雰囲気を見て回る。FITの買取価格の下落が続く昨今ゆえ、流石に盛り上がりに欠けるのでは…という非常に個人的な思い込みとは裏腹に、出展メーカーはどこもいたって元気な印象(実は毎年開催にも関わらず、当イベントは2年ぶりの取材で、勉強不足を痛感した次第…)。日本ではいざ知らず、国際的に見れば再生可能エネルギーはまだまだ成長産業ということか。
ソーラーシェアリングについては、多くのメーカーが架台を中心に展示・アピールしていたものの、大きなインパクトを感じるのは数社のみ。強調して売りに行くというよりは、もはや業界内でもデフォルトのラインナップとなっている印象だった。
会場雑観。3日間開催のうち初日の取材だったが、多くの来場者で混雑していた。
個人的に気になったのは、こちらのFESほか数社で展示されていた瓦型のモジュール。住宅向けモジュールも、どんどん多様化が進み、薄型やフレキシブル・軽量タイプなどバリエーションが豊富に。
注目を集めていたWWBソーラーの超軽量モジュール「マクサライト」を活用した円形“ゲル”型の多目的ドームシステム。ソーラーシェアリングの広がる可能性を具現化したシステムといえるだろう。
セミナー参加者の関心は?
今回取材したのは初日の2月27日(水)。会場の雰囲気はもちろんだが、今やソーラーシェアリング界の第一人者であり、またソーラーシェアリング推進連盟の代表理事でもある千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長のセミナー開催が予定されていたからだ。
セミナー会場は、無料ということもあってか、約500席が用意された大きなもの。「太陽光発電システムの新たな成長市場」と題して、馬上氏とともに、カネカの常務執行役員泥克信氏のプレゼンテーションも行われた。
昼食後最初のプログラムとしての開催だったが、会場はほぼ満員。まずカネカの泥氏が、同社の取り組みとしてZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)などの事例を中心にプレゼンテーション。公共建築物や学校などへの導入によって広がる、太陽光発電市場の新たな側面を感じさせる。
約40分に渡り、ソーラーシェアリング市場の可能性と未来について熱弁を振るう馬上氏
課題はありつつ、未来には光も?
続いて登場した馬上氏のプレゼンテーションだが、ソーラーシェアリングに詳しくない来場者にもわかりやすいだけでなく、これまでの傾向、市場としてのポテンシャル、何より地球環境や農業への大きな貢献など、コンパクトながら非常にポイントを抑えたもので、熱心にメモをとる参加者も多かった。あとで、当の馬上氏にも確認してみたところ、セミナー終了後に多くの方から問い合わせや激励を受け、反響は上々だったとのことだ。
馬上氏もプレゼン内で触れていたが、次々に大規模な発電所を国の支援のもとに完成させる中国や、国をあげてソーラーシェアリングを推進し始めた韓国を始め、アジア各国での勢いに比べ、ここ日本での盛り上がりについては、やや物足りない感は拭えない。農水省の一時転用許可が始まってから丸5年以上が経過し、事例も増えたとはいえ、特に営農に適した作物や架台の耐久性についての研究などもまだまだといった状況だ。
ただ、イベント全体を俯瞰したわけではなく、あくまで“肌感覚”の域を出ないかもしれないが、業界内におけるソーラーシェアリングへの関心は、決して低いわけでなく、むしろ今後の成長市場としての可能性を感じるビジネスパーソンは多いということではなかろうか。
今後の課題を再認識しつつも、目指すべき未来について、ちょっと明るい気持ちになれた取材だった。