WWB Solar山梨太陽光試験所(2)新システム開発エピソード
太陽光発電の総合メーカーWWBの山梨試験所は、同社の軽量太陽光発電モジュール「マクサライト」各種の設置例を実際に見ることができるだけでなく、施工体験までできる研修施設としての機能を併せ持った総合的な施設だ。
その成り立ちやコンセプトについては、前回記事にてご紹介したが、今回は同社がビニールハウス用に開発した画期的なソーラーシェアリング・システムについて、開発エピソードをご紹介しよう。
開発は、福岡から単身赴任で乗り込んだWWBグリーンエネルギー事業部 商品開発部の立野孝さん、同奥田明男さん、そして地元でハウスメーカーを営み、農家さんたちとのつながりも深いヤマナカ産業代表の山中貞行さん(ヤマナカ産業は、試験所の敷地や設備も提供)を中心に勧められた。
左からWWBの奥田さん、立野さん、山中さん。
試行錯誤を繰り返して完成した新システム
「農場にご協力いただいて、実際のビニールハウスに従来の細形パネルを設置して試験を始めたのが2年ほど前でしょうか。しかし、パネル自体の重量の問題は大きく、1年ほど前に当社の超軽量モジュールマクサライトシリーズができてから、開発も大きく進展した感じです」(立野さん)
しかし、超軽量モジュールでパネル重量の問題は解決したものの、今度はパネルを支える骨組みの問題が。
「そもそもビニールハウスは軽いものですから、言ってみれば躯体が“ふにゃふにゃ”してるわけです。そこに、軽くて薄く柔軟なマクサライトを組み合わせると、柔らかいもの同士になってしまってかえって設置しづらいことがわかったんですよ」(奥田さん)
WWBの新システムは、ビニールハウスの上から、すっぽりと被せるように骨組みごとパネルを被せるカタチになっている。前述の問題をクリアするために、軽量で柔軟でパネルにあえてガイドプレート(枠)を追加し、いわば骨組みと一体化することで強度を出しながら扱いやすさも実現したのだ。
「実証実験を繰り返したからこそたどり着けたカタチだと言えますね。ここに到るまでに、何種類も試作品を作りました。例えば、一番最初は、パネルをワイヤーを使って引っ張り上げる案を考えました。でもやって見ると、ビニールがビリビリに破れてしまって…(笑)。レールを敷いておいて、反対側から引っ張る、なんて案もありましたね」(奥田さん)
「ビニールハウスというのは、耐久性があまり高いわけではなく、2年〜5年程度、早ければ1年でビニールを張り替える必要があるらしいんです。だからステンレスのレールなんてつけたら、張り替える際におおごとになってしまいますよね。最終的にパイプの骨組みを別枠として作ることにしたのは、そうした張替え時の利便性を考えてのことです」(立野さん)
試験所のある山梨県に限らず、ビニールハウスを使って栽培される作物は、多種多様。ということは使い方も様々ということだ。そういう農家目線にたった開発こそが、同社会開発の真骨頂と言えるだろう。
完成したシステムを活用した様々なプランを提案
「この辺りでは、別荘も多いですし、例えばドームハウスを作りたいというお客様もいらっしゃいます。従来のパネルであれば、太陽光発電を導入するには、設置が難しかったんですが、WWBのマクサライトであれば、そういう物件にも問題なく提案できるんです。設置も屋根でも壁面でも自由にできますからね」(山中さん)
実はWWBも、路地の畑+ソーラーシェアリング・システムを備えたビニールハウス、さらに簡単な居住スペースとしてのドームハウスをカップリングした、ドイツのクライガルテンや、ロシアのダーチャのような「週末農園(仮称)」のプランも作成、提案を開始している。
ちなみにこのドームハウスもWWBのオリジナル開発の骨組みを採用しており、採光の効率がいいことから、複数の作物を栽培できる「円形ビニールハウス」としての使用も可能であり、もちろんこれを組み合わせたプランも提案可能だという。
河口湖畔に設置が始まったというWWBの実証用のドームハウス施工の様子。こちらは、外国人環境客向けの民泊施設として使用予定とか。
ソーラーシェアリングへの注目度が上がりつつあるのを肌で感じる昨今、単なる未利用農地・耕作放棄地の利活用のみならず、こうしたライフスタイルにまで及ぶプランを合わせて実現していくことで、さらなるソーラーシェアリングの拡散が現実のものとなっていくことは間違いない。
WWBが切り開く、超軽量パネル「マクサライト」と、ビニールハウス、さらには新型ドームハウス型の円形ビニールハウスのシステムを活用した、ソーラーシェアリングの新しい地平に、今後も注目していきたい。
[WWB Solar 山梨太陽光試験場]
住所:〒400-0211 山梨県南アルプス市上今諏訪850-1
『木の国サイト』内 有限会社ヤマナカ産業
営業時間:8:00〜17:00
休日:第2土曜、日曜、祝祭日
※要予約
photo /anlib design