次世代に農地を残したい━━ 地域の未来を賭けたソーラーシェアリング/福島県南相馬市(1)
原発事故の影響を大きく受けた福島県南相馬市。地域と農業の存続をかけて「えこえね南相馬」というグループが、農家と協力しながらソーラーシェアリング設置を進めている。
衰退する地域を どうするか?
地域の多くの部分が、福島第一原発から30 km圏内に位置する福島県南相馬市。この地域の農業は、原発事故によって甚大な被害を受けた。南相馬ではもともと、米などを栽培する家が多かったが、事故の影響で農業から離れる人が続出。農業ができなくなり、「この町はどうなっていくのか?」という不安の声が高まった。
そんな中、エネルギーを通じて南相馬のまちや暮らしを取り戻そうとする「一般社団法人えこえね南相馬研究機構」が発足(2013年3月)した。 理事長の高橋荘平さんは、「自分は農家ではありませんが、農家の方が作付け制限されて『土に触れることができなくなって寂しい』と言ったり、学生が『秋になっても稲が実ることのない風景に違和感がある』と言うのを聞いて、自分たちが次世代のためになんとかできないか、と思いました」と、発足のきっかけを語る。
「農業を続けるかどうかは次の世代が決めることですが、将来のために、やろうと思ったらやれる環境を今つくっておかなければ、と思ったんです」(高橋さん)。
さまざまな方法を模索する中、「えこえね南相馬」の理事である中山弘さんがソーラーシェアリングの盛んな千葉県のグループと交流があったことで、南相馬でも導入してみることになった。
「うちの場合は、ビジネスというよりも震災復興という意味合いが強かったんです。しばらく農業のできない土地であっても、売電収入で農地を維持できるというのは魅力的な話でした」(中山さん)。
最初の設備は、パイロットプラントとして地域の人々に見学に来てもらう目的で設置。農地ではない土地に自分たち自身で施工、2013年9月に「再エネの里」として設備容量30 kWのソーラーシェアリングが運転を始めた。(つづく)
一般社団法人えこえね南相馬研究機構 www.ee-minamisoma.jp
カボチャを栽培している東後迫(とうごさく)発電所。法面も活かしてパネルを設置している。
(「アースジャーナルvo.5」より転載)