世界が注目するソーラーシェアリングの先駆け 営農・発電・地域活性化で4年間の実績が光る/千葉県市原市
日本で最も早い時期にソーラーシェアリングの導入に踏み切った、千葉県市原市の高澤真さん。太陽光パネルを設置した750㎡の畑には、たくさんの野菜が元気に育ち、シェアリング理論の正しさを証明してくれている。いまや海外からも視察者が訪れるという、パイオニアの地を訪ねた。
どんな野菜も良く育つ シェアリングの可能性を確信
「カボチャ、ハクサイ、ダイコンなど、太陽光パネルの下で10種類以上の野菜を栽培してきましたが、どれも本当に良く育ってくれます。このサトイモなどは、パネルを設置する前よりも明らかに収量が増えました」。 そう言って、愛おしそうに作物を見つめる高澤真さん。実家の畑の上で、4年前から太陽光発電を行っているソーラーシェアリング導入者の草分け的存在だ。 以前からエネルギー問題に関心をもっていた高澤さんだが、東日本大震災によって、自然エネルギーの重要性を改めて痛感したという。そんな中、ソーラーシェアリングの存在を知った高澤さんに、迷いはなかった。 「長島彬先生の実証試験場に見学に行ったのですが、これこそ今やるべきことだと確信しました。引き継ぐべき農地がある私にとって、うってつけだったのです」。 とはいえ、参考にすべき前例など、ほとんどない時代だ。機器の選定から、設置作業、電力会社との交渉まで、試行錯誤の連続。「当時は電気工事をやってくれる会社を探すのも大変」だったという。
発電量は予想以上 海外からの視察者も来訪
先駆者ならではの困難を乗り越え誕生した「ソーラーシェアリング上総鶴舞」。2016年には、早くも運転開始3年を迎え、農地の一時転用も滞りなく再許可された。 高澤さんは、ソーラーシェアリングを始めてからの日々を次のように振り返る。 「実際にやってみて、営農に不都合はまったくなかったし、発電量は当初の予想以上でした。ソーラーシェアリングを通して地元とのつながりは強くなり、さらに各地からたくさんの見学者が訪れ、ネットワークも広がりました。一農家の収益向上というだけでなく、多くの方々が、地域のことやエネルギーのことを考えるきっかけにしてくれているのが嬉しいです」。 先日は、アフリカからも見学者が来たという。千葉県発ソーラーシェアリングの先行事例が、世界の標準モデルとなる日も、そう遠くないのかもしれない。地域を元気にするため、日本のエネルギーを変えていくため、高沢さんの挑戦はこれからも続く。
ソーラーシェアリング上総鶴舞 kazusatsurumaisolar.jp
前例のない時代、地元の業者さんと試行錯誤をしながら取り付けた太陽光パネル。台風が来てもビクともしない、高澤さんの自信作だ。ソーラーシェアリングでつくった野菜は近くの直売所に置かれ、訪れた人々を喜ばせている。
「太陽光パネルが日射しを弱めてくれるので、真夏の農作業がラクになった」と喜ぶお父さん。
パネルの下には様々な野菜が、どれも元気に育っている。
発電量や売電額はタブレットでチェック。4年経っても経年劣化による発電量の目減りはほとんど感じられないという。
隣接するビニールハウスでは、太陽光発電による水耕栽培を実験中。
DATA
ソーラーシェアリング上総鶴舞
場所:千葉県市原市
設備容量:34.8kW
土地面積:750㎡
導入年月日:2013年4月
導入費用:約1260万円
年間の売電収入:約160万円
パネルの下で育てている作目:サトイモ、トマト、キュウリ、ブルーベリー、インゲン、キャベツ、ハクサイ、ダイコン他
(「アースジャーナルvo.5」より転載)