[インタビュー]ファームドゥ代表取締役 岩井雅之氏

[INTERVIEW]ファームドゥ代表取締役 岩井雅之氏

地域経済の発展にも大きく貢献

太陽光が農業に与える「収益」の力

いち早くソーラーシェアリングを導入し、運営を続けるファームドゥ。 代表の岩井氏に発電と農業による地域社会への貢献について伺った。

まだまだ拡大するエネルギー分野に着目

農産物の生産や販売、発電事業と多角的に展開するファームドゥグループ。トップの岩井氏が自然エネルギー事業を始めたのは、東日本大震災に起因した福島第一原発の事故がきっかけだった。

その影響は群馬県のファームドゥにまで及び、経営する農産物の直売所は風評被害で売上げが激減、放射能汚染を疑われて廃棄される野菜を目の当たりにした。また、それまで当たり前のように使っていた電気は計画停電の実施で日々の生活にも不便を強いられ、心から自然エネルギーの重要性と電気のありがたみを知ることになったという。

「世界がどんどん発展し、今は電気を使っていない国の人たちが、今後電気を使い始めたらどうなると思いますか?」。

岩井氏によれば、20年後には現在の20倍程度にまで電力消費量が膨れあがるという。岩井氏はそこに事業の可能性を見出し、ファームドゥは2013年に太陽光発電事業に参入。翌年には農地を活用したソーラーシェアリングを開始、発電事業全体に200億円の投資を予定し、整備は今も着々と進んでいる。

 

 全国的にもめずらしいソーラーシェアリングの水耕栽培。売電収入のおかげで安定的な運営が可能。

 

地域還元型のシステムで地産地消の経済を生む

ファームドゥグループがソーラーシェアリングに使う農地は、主に耕作放棄地で、借り上げや購入を行って確保している。作付面積は群馬県内で60 haを計画、うち半分以上がすでに稼働中だ。農地の所有者は農作業や管理の手間が省ける上に賃料が収入となり、ファームドゥグループが収益をあげることで自治体は税収が増えるというメリットがある。当然、作業に携わる人材も必要で、地域の雇用も増えるわけだ。

「私たちが大手電力会社に支払っている電気料は、電気を使用した本人の地域には還元されないシステムになっています。しかしファームドゥグループが進めている発電事業は、完全に地域還元型なんです」。

設備投資にかかる莫大な資金の融資も、地域金融機関との取引を主としている。こうして、地域活性化への貢献度も高い。

 

「稼げる農業」で若者の就農を促進する

ファームドゥが、ソーラーシェアリングのモデルケースとして建設した高崎市中里町「夢の農業王国」は、敷地内に営農型賃貸住宅を完備。食事の提供もあり、安心して就農できる施設となっている。また、来春からは前橋市の中央農業大学校にて、ファームドゥが最長4年間の受講料を支援する「ファーム農業経営学科」がスタート。収益力の高いソーラーシェアリングでの農業のノウハウを、実践しながら学べる。こうして、次世代の農業経営者の育成にも力を入れているのだ。

さらに、ソーラーシェアリングを使った、テナント形式の農場運営も現在構想中とのことで、ファームドゥは今後も「稼げる農業」を提唱していくそうだ。

 

路地に並ぶ太陽光パネルの下では赤シソを栽培。作物により屋内外を使い分ける。

 

「夢の農業王国」にある営農型賃貸住宅。就農者向けの施設が充実。

 

トマトもソーラーシェアリングで栽培。室内なので肥料や水量をコンピューター管理することも容易にでき、生育に二重のメリットがある。

 


ファームドゥ株式会社

群馬県前橋市問屋町1-1-1 NF2ビル3F

www.farmdo.com

ファームドゥグループとして、農産物の直売所「ファームドゥ」、ソーラーファーム運営の「ファームクラブ」、発電事業の「ファームランド」の3事業を展開。モンゴルとミャンマーにも拠点を置き、モンゴルではソーラーシェアリングも開始している。


photo: Daisuke Tsuduki text: Nahoko Kodama

(「アースジャーナルvo.5」より転載 ※一部再編集)

 

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