馬上丈司の再エネ×農業活性化論(2)

農業のエネルギーを 考える時代の到来

昨年、ソーラーシェアリング特集号の第1号を制作していた頃は、匝瑳メガソーラーシェアリングが完工した勢いに乗って、ソーラーシェアリングに対する関心の高まりに応えるべく誰もが最初に手に取る入門的な誌面を目指していた。ソーラーシェアリングの黎明期を代表するような事例を取り上げ、各地で試行錯誤されてきた地域に根ざした取り組みを通じて、ソーラーシェアリングの持つ可能性を感じて欲しいと考えていた。

今回、第2号を制作するに当たって考えたことは、ソーラーシェアリングが普及期に突入していく中で、普遍的・標準的なモデルとなるような事例を取り上げたいという点である。ある地域に先駆的な見識を持ち、類い希なる行動力を有した人が牽引する、言うなれば「スペシャル」な事例こそが黎明期には求められるが、それが普及していく過程では誰もが取り組めるような形を示していく必要がある。その目論見が果たせるだろうという感触を得る中で、ここでは更にその先を考えてみたい。

トラクターが電気で動く時代は、そう遠くない。

 

農業のエネルギー 転換の開始

ソーラーシェアリングによって農地に起こる変化の一つは、そこに「電源」が生まれることにある。太陽光発電の利点は、太陽光が降り注ぐ場所であれば様々な規模や形態で電気を作り出すことができる点である。この電気を農業に使うことは、これからの時代には必須となっていくと考えている。その理由は、農業に投入されるエネルギーの大半を化石燃料が占めている点にある。

資源エネルギー庁の総合エネルギー統計2016によれば、農業の最終エネルギー消費は17万4395TJであり、その95%にあたる16万5502TJがガソリン・灯油・軽油・重油などの石油製品である。残りの5%が電気だがその量は約24・4億kWhであり、国内の電力消費の0・25%程度でしかない。すなわち、我が国の農業は化石燃料によって成り立っており、燃料価格が高騰したり輸入が途絶したりといった事態になれば、食料生産は危機的な状況に陥ってしまう。また、化学肥料や農薬の使用を抑えて環境への負荷の軽減を図ったとしても、投入されるエネルギーが化石燃料由来では気候変動問題という大きな環境問題の解決には貢献できていないことになる。

この農業に投入されるエネルギーの転換を考えるとき、ソーラーシェアリングによって農地で自然エネルギーが生み出すことが可能であるという認識が広まっていけば、そのエネルギーを農業に投入しようという発想を容易にしていくだろう。 我が国の大きな課題であるエネルギー自給のために、自然エネルギーの導入ポテンシャルを広げていくと共に、農業という産業の安定化に寄与していくソーラーシェアリングが、更に農業自体のエネルギー転換を進めていくことで、より持続可能な社会のあり方に近づいていくことになる。

ソーラーシェアリングが普及した先には、自然エネルギーによる農業が当たり前になる時代が訪れると確信している。

 


まがみたけし●1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。株式会社エコ・マイファーム代表取締役、一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟代表理事。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し博士(公共学)の学位を日本で初めて取得。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。日本各地で自然エネルギーを活用した様々な地域活性化事業に携わっている。


(「アースジャーナルvo.6」より転載 ※一部再編集)

 

馬上丈司の再エネ×農業活性化論(1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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