馬上丈司の再エネ×農業活性化論(1)

ソーラー シェアリングが開く農業の新たな未来

私は、大学院時代から自然エネルギーの研究に携わってきました。その中でも、10年以上に亘って『永続地帯』という研究を続けています。この研究の中では、日本国内の全ての市町村を対象として、自然エネルギーによるエネルギー自給率と農業生産によるカロリーベースの食料自給率を調べてきました。この研究の中で見えてきたのは、自然エネルギーが豊富な地域では農業生産も多いということです。これは、自然エネルギーも農業も同じように自然の恵みを得るという共通点から来ているからだと考えています。そして、今回特集したソーラーシェアリングは、この2つを両立させていくこれまでにない仕組みです。

 

農業が抱える問題と 向き合う

いま、日本の農業は複雑な問題を抱えています。例えば、そのひとつとして農業従事者数の減少があります。これまで農業を担ってきた人々が高齢になって引退していく中で、新規に就農する人数が追いついていません。農林水産省の調査では、新規就農に対する不安として、収入の少なさが最大の理由に挙げられています。その視点で言えば、ソーラーシェアリングは農家の直接的な所得向上につながります。

今回の特集の中でも、農業を続ける、農業を受け継ぐためにソーラーシェアリングに取り組んでいるという声がありました。 また、私も深く関わっている匝瑳市飯塚地区のソーラーシェアリングプロジェクトでは、衰退する地域の農業に対してソーラーシェアリングが果たす役割がはっきりと見えてきています。担い手が居ない農地が増えてきていた中で、地元の若手農家とベテラン農家がThree little birds合同会社として新しい農業法人を設立し、そこに匝瑳に移住してきた新規就農者の方も加わりました。そして、地区内で増える一方だった耕作放棄地をターゲットにしてソーラーシェアリングの導入を進めた結果、わずか1年で4.5haの耕作放棄地を耕地に戻すことが出来たのです。

これからの ソーラーシェアリング

FITの調達価格(=売電価格)の低下が、これからのソーラーシェアリング普及の足枷になるのでは?という声も耳にします。でも、今より売電価格が下がるということは、私たちが普段買う電気よりも安く発電できているということなのです。それなら、今度は自家消費で農業に自然エネルギーを活用していく道を目指すことが出来ます。 自然エネルギーの普及をすすめ、更に農家さんの所得向上を通じて農業の発展にも貢献して、農地の持つ本来のポテンシャルを引き出していく。地域の基盤産業である農業が元気になっていくことで、地域の活性化に向けた好循環が生まれていく。ソーラーシェアリングには、そんな新しい農業の未来を開く可能性があると感じています。


まがみたけし●1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。株式会社エコ・マイファーム代表取締役、株式会社グリーン・シフト代表取締役。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し博士(公共学)の学位を日本で初めて取得。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。日本各地で自然エネルギーを活用した様々な地域活性化事業に携わっている。


(「アースジャーナルvo.5」より転載 ※一部再編集)

 

馬上丈司の再エネ×農業活性化論(2)

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