ソーラーシェアリング in PV JAPAN 2018

盛り上がりを見せつつあるソーラーシェアリングは、現在果たして、太陽光発電業界全体においてはどんなポジションにあるのか……6月22日、毎年開かれている太陽光発電に関する総合イベント「PV JAPAN」の最終日を取材した。

馬上氏の説明に、熱心に聞き入る来場者

イベント自体は6月20日からの3日間開催で、会場は神奈川県横浜市にあるパシフィコ横浜。第13回再生可能エネルギー世界展示会(グランド再生可能エネルギー2018国際会議併設展示会)の1部としての開催。会場内には、様々な太陽光発電関連企業のブースのほか、アカデミックギャラリー(全国の大学における関連技術の研究発表)やEUゾーンなども設けられ、まさに太陽光発電の最新情報が集まる展示会だ。

会期中には別会場も含めて様々なセミナーが開催されていたのだが、今回のお目当てはソーラーシェアリング推進連盟の代表理事でもある千葉エコ・エネルギー馬上氏による出展者セミナー。「自然エネルギーと農業の新時代」と題した同セミナーに対して、来場者の反応がどれほどのものかみてみようというわけだ。

 

場所は展示会場内に設けられた50席ほどのコンパクトな特設ステージだったが、開演時間には概ね満席で着席せず遠巻きに聞く来場者も。最終日の午前中ということもあってか、来場者自体がそれほど多いとは言えない中、なかなかの注目度と言えそう。

 

時間が20分とかなり短かったにも関わらず、ソーラーシェアリングの日本における現状を、導入件数や市場ポテンシャル、政策面と異なる角度からわかりやすく解説する馬上氏。

「現在日本の農地面積は昨年2017年の集計では、耕地が約444万ha(うち田/約242万ha、畑/約202万ha)で、前年の約450万haから1年で6万haも減少…つまり耕地でなくなっており、現状約120万haもの農地が耕作放棄地となっている。耕地面積の1%で太陽光発電を行うことで約30GWの発電量が見込めるという試算からも、ソーラーシェアリングの市場ポテンシャルは、決して低くない」……熱心にメモをとる参加者も多く見受けられた。

 

セミナー終了後には、「EARTH JOURNAL vol.5 ソーラーシェアリング特集」も特別に販売、手に取る参加者も多かった。

 

実は馬上氏の前に、株式会社エナテクス尾嶋宣彦氏による「営農活動を支える太陽光発電方式」と題したセミナーも開講、同社の2軸追尾式システムについて事例とともに紹介されていた。セミナー終了後にブースを訪れてみたが、奈良県天理市で当地の株式会社エグテックとともに開発した設置事例を中心に、興味深い話を多く聞かせていただいた(写真は無人だが、撮影のためにわざわざフレームから外れていただいた)。またエナテクスがある鳥取県東伯郡北栄町で2015年11月から稼働するメガソーラーシェアリング「北栄ソーラーファーム」では、屋上や壁面、法面などの緑化対策として活用される「キリンソウ」の苗を栽培しており、これは砂漠化防止策としてアフリカのボツワナ共和国からも声がかかり、共同の取り組みも進めているそう。ソーラーシェアリング推進連盟にも登録されているとのことだった。

直接的にはソーラーシェアリングとの関連はないものの、会場内でちょっと気になったのが三井住友建設による水上太陽光発電システム「Pukutto」。垂直架台を具えた発泡スチロール内部充填のフロートを活用するシステムで、現在は四国・中国地方のため池などへの設置事例があるとのこと。天候による水面の変化が大きいことから海面での設置については難しいとの話だったが、内陸の養殖池などとのマッチングには可能性もあるのでは…と感じた。

本展示会は、2015年まで東京ビッグサイトで開催されていたが、2016年から現在のパシフィコ横浜での開催に(つまり規模が縮小)。太陽光発電ブーム(バブル)もすっかり沈静化し、出展者・来場者ともに減少傾向にあるのは明らかだが、そんな中においてソーラーシェアリングは、一定の認知をされ、やはりビジネス的にも関心は高まっている…そんな印象を受けた。

 

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